ちょっとご無沙汰しております。
昼も夜も虫や微生物の世界が豊かで、しばらくそういうものに夢中になっていました。
そしてしばらく経ったからやっと人に言えるようなおそろしい思いをした夜があった。
おそろしいと言っても、誰かが傷つけられたり損なわれたりするような、あってはならない怒るべき出来事ではなくて、
ただ私が夜中にひとり、体験したことのないおそれの只中にどういうわけかいて、
必死の思いでふんばり続け(体勢としてはベッドで寝てるだけだけど)
やっと、カラスが鳴いて、ああ、朝がきたんだ、
とほっとした、
という個人的な事件があったのだ。
ほっとはしたけど、とても眠れるような気分じゃなかったので、窓の外を見たら、
夜の間じゅう私が思い描いてたおそろしい世界の痕跡すらどこにもなくて、
明け方の空にぴかーーんと月が光り輝いていた。
カラスも他の鳥たちも、よく神の使いと聞くけれど、どんな夜も、鳥が鳴いて、明けて、朝が来て終わっていくのかと思ったら、なるほど神の使いだと思った。
月はあんなに輝いていたのに、朝が始まって進んでいくに連れ、透明になって消えてしまった。
それはさておき、最近、はじめてカラスをかわいいなあと思っている。
海でボーッとしてると、ふと気づくと、横でカラスも海の方を見てボーッとしたりしている。
風が強いからか、カラスも頭がちょっとぼさぼさになってて、
東京ではカラスも緊張度が高い感じだったし、まさかカラスが、ぼさぼさ頭で一緒に並んでボーッとする相手になるとは思ってもなかった。
今日は大きな黒いちょうちょ、下の方に少しだけオレンジが付いた、ゆっくり飛ぶ黒い大きなちょうちょ2匹に出会った。
ちょうちょが美しくて、カラスがかわいくて、夜がおそろしくて、ダンゴムシが足の間を通って、カラスが鳴いて、雲が泳いで、月が光って、月が消えて、
そういう中に私が歌うことも入っていればいいなあと思う。